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 暗闇の中を歩く。
 暗く、寂しい道だ。

 振り返れば遠くには光がある。

 隣に僕と同じ道を歩いている人がいる。
 でも誰かはわからない。

 さっきまで後ろの光の中にいた気がする。
 だけどもう覚えていない。
 ただ、なにかを学んだ気がする。
 それはきっと、大事なことだ。
 そう心が叫んでいる。

 遠くの暗闇に光が見える。
 暖かな、けれど残酷な光。
 それを糧にして僕は強くなる。
 隣の人も。

 僕は隣の人と顔を合わせ、光に向かって走り出す。

「行こう、鈴」

 繰り返す、いつまでも。

 ふと、聞き慣れた人の声が聞こえたような気がした。


 

 


『来ヶ谷唯湖のお話』

 

 

 

/恭介

 繰り返す世界を巡り、理樹と鈴は強くなる。

 俺はそれを見ながら、手に持った本のページをめくる。

 話はどんどん進行していく。
 

小人の悩みを解決した。

小人の悩みを解決できなかった。
 

 そうして理樹は大きくなる。

 そして俺を越えていく。

 それでいい。

 そのためなら俺は仲間であろうと利用する。
 今度は…そうか、来ヶ谷か。

 俺は誰であろうと利用する。
 謝りもしない。

 ただ、傷ついて『歪んだ仮面』を『新しい仮面』に変えるだけだ。

 心は痛まない。

 さぁ、進もう。

「繰り返す。終わるまで、止まらない」

 

 


/来ヶ谷

 理樹君から届いたメール。
 世界の崩壊の直前に間に合わせたメール。

 しかし彼は来ないのだろう。

 私が繰り返した一日。
 みんなで作り上げた世界。

 恭介氏のせめての優しさだったのか、
 それとも理樹君を強くするための餌だったのか。

 それでも私は、この世界の中で、夢を見させてもらった。

 一日を繰り返し、何度も彼と過ごす。

 私は怖くなり、記憶から彼との付き合いを消し去った。
 なのに彼は忘れず、結局一日の終わりが近づいた。

 その最後に届いた一通のメール。
 きっと何度も送信したのだろう。

 結果、一通だけ届いた。
 永遠の一日が終わる。
 それでお終い。


 ぐるりと一周して世界は巻き戻る。
 その後の私は、人生において最も驚いただろう。
 別の世界だというのに、私の携帯電話の受信欄にはまだそれがあった。

 落ち着いた湖面は波を打つ。
 終わりと決めた心が揺らぐ。

 もう存分に夢は見た。なのにまだ求めるのか?

 内なる自分が問いかける。

(違う、私はなにも求めてなどいない…)

 ふと、思い出す。

 繰り返す一日の中でも決して諦めなかった彼の姿を。

 そして思い出す。

 彼と別れる前、私が彼に言った言葉を。

 もう、心は決まっていた。

(済まないが、もう少しだけ夢を見させてくれ)

 私は震える手で、彼に呼び出しのメールを打つ。

 

 


/理樹

 光を抜ける。
 またこの暗闇だ。

 なんだか後ろの光は寂しかった気がする。

 静かな部屋、しんしんと降りしきる雪、規則通りにしか動かない人形。
 聞こえる放送、走る僕。

 終わる一日、終わる世界。

 その前にたどり着いた。

 強くて、綺麗で、
 恥ずかしがり屋で、かわいい。

 それ以上はわからない。だけど、最後に一つ思い出した。

『…は私から…夕日の…するよ』

 穴だらけだったけど大事な言葉。

 次の光が近づくにつれて、その記憶も薄れる。

 はたして僕は強くなれたのだろうか?

 

 


/恭介

 来ヶ谷の世界。

 俺たちの世界。

 夢はもう存分に見たろ?

 おつかれさま。

 さぁ、繰り返そう。

 何度でも、何度でも。

 ふたりを強くするために世界を再び巡らせる。
 そんな時に、地に落ちた仮面を見てしまった。
 この仮面は世界の終わりに逆らい、来ヶ谷を望んだ理樹を見てきた。

 その仮面が言う。

「お前はそれでいいのか?」

「なにをバカな、俺は理樹の為なら仲間でさえ利用する。それはお前自身よく知っているはずだ」

「じゃあお前はついさっきまでの理樹を見てなかったのか?
 来ヶ谷を望み、なのに一緒にいることすら叶わず終了した」

「あぁ、俺だって見たさ。お前を通してな」

「ならどうせ繰り返す世界だ。もう少し夢を見させてやってもいいじゃないか」

 この仮面は悲しそうに形を歪める。

「生憎、そんな余裕はない」

 仮面を霧散させる。

 心は、痛まない。

 繰り返そう…

 何度でも。

 …

 

 


/理樹

 今日は来ヶ谷さんが野球の練習に来なかった。
 そのことを僕に言いに来た時に、どこか落ち着かない様子だったのを覚えている。
 理由を聞いても上手にはぐらかされてしまった。


 練習を終えた頃、綺麗な夕焼けが校舎を照らしていた。
 赤い、黄金ともとれるような色。
 それを眺めているところへ──

「理樹」
「なに?」
「……いや、なんでもない…」

 ──恭介が話しかけてきた。
 一瞬だけ辛そうに顔を歪めた後、踵を返して去って行った。

「どうしたんだろ?」

 恭介があんな顔するなんて、後で少し聞いてみよう。

 そんなことを考えていたら携帯が鳴った。
 見てみると、それは来ヶ谷さんからのメールだった。

 内容はただ一言「教室に来てほしい」とだけ。

「なにかあったのかな?」

 練習も休んで僕を呼び出すってことは、他の人に知られたくないってことかな?
 変なイタズラじゃなければいいけど。

「ん?理樹、どこ行くんだ?」

 真人が訊ねてくる。

「ちょっと用事。先に行ってて」
「おう、わかったぜ」

 真人と別れて、教室に向かう。

 誰もいない廊下を歩く。

 無音、聞こえるのはリノリウムの床に響く靴音だけ。

 …つい最近こんな経験をした気がする。
 ただそれは夕方ではなかったような。

 そうこうしているうちに教室にたどり着く。
 中には来ヶ谷さんがいた。

「お待たせ。なにかあったの?」

 来ヶ谷さんは僕の姿を確認して、少し間を置いたあと。

「これから話すのは冗談でもなんでもないからよく聞いてほしい」

 と、真面目な声で言った。

「わかった」

 それに応えて真剣に返事をする。
 それから2分ほど経った時だった。

「好きなんだ」

 意を決したような表情のあと、彼女は僕の思考を停止させるようなことを言った。

「へ?」

 思わず間抜けな声が出てしまう。

「それって…」
「君のことが好きなんだ。『恋してる』って方の好きなんだ」

 僕の声を遮るように話す来ヶ谷さんの顔は、夕陽が照らしていることを差し引いても真っ赤だった。

 その時、声が聞こえた。

『この世界のこの日だけ、譲歩してやる…』

 その声を聞いた瞬間、なにかが頭の中に流れ込んできた。

 暗い道と、光の記憶。

 そこで僕は、来ヶ谷さんに恋をしていた。
 色々あって、なんとか付き合い始めたけど不可解な現象が起こり、結局世界は終了した。

 その終了の直前にした、一つの約束を思い出した。

『今度は私から、夕陽が照らす教室に呼び出して告白するよ』

 そして僕が送った、何通も送って、でも届いたか分からないメール。

 全ての記憶が戻る。

「あぁ、忘れてた…」
「ごめんね来ヶ谷さん。僕、忘れてたよ」
「理樹君?」
「うん、そうだね。ぜひ付き合ってください」
「…………」
「ど、どうしたの、来ヶ谷さん?」

 赤かった顔は、さらに真っ赤に染まっていた。

 彼女の体が揺れる。

 それを支えて、
「..........」
 不意になにかを聞きとった。

 耳を澄ますと、それは「ありがとう」だった。

(お礼を言われることじゃないのに)

 そんな彼女に、僕は苦笑しながら言った。

「どういたしまして。こちらこそありがとう」

 


「来ヶ谷さんの部屋ってどこ?」

 とりあえず彼女は寝かせた方がいいだろう。
 部屋を聞き出して運ぶ。
 背負うと「恥ずかしい」と言って暴れる彼女が可愛かった。

 部屋までたどり着き、布団に寝かせる。

「ふぅ、ようやく落ち着いてきた。ありがとう、理樹君」
「お礼を言われることじゃないよ」

 そのあとに「付き合ってるんだから」と言おうとしたけど、また真っ赤になるだろうからやめておいた。

「じゃあ、そろそろ真人少年たちが寂しがっているだろう。今日はもう帰った方がいい」
「そうだね。じゃあ、また明日」
「あぁ。また、明日だ…」

 お別れを言って、自分の部屋に戻る。

「あれ?恭介は?」

 いつもならいるはずの恭介の姿が見当たらない。

「んぁ?あいつなら先に寝るって言ってたぜ」

「そっか、じゃあ仕方無いね」

 恭介にもそんな日があるのだろう。
 さっきの表情が気になったけど、恭介ならたぶん、ひとりでなんでも解決しちゃうだろうし。

 不意に眠気が襲って来る。
 だけど、これはいつもと違うような───

「ごめん真人、僕も先に寝るね」
「おぅ、おやすみ」

 真人が電気を消してくれる。

 目を閉じるとすぐに意識が途切れた。

 その直前。
 最後に見たのは…

 

 


/来ヶ谷

 適当な理由をつけて理樹君を退室させる。
 …最後にちゃんとお別れを言えた。
 本当に、私ばかりがこんな夢を見てよかったのか。

 だがそれもそろそろ終わりか。
 見計らったように恭介氏が入室してくる。

「いい夢見れたかい?」

「ああ、お陰様で。
 …ありがとう」

「そりゃあどういたしまして
 でもこれで終わりだ」

「わかっている」

 世界が反転する。

 さあ、次の世界…鈴君の世界では私も役者に徹しよう。

 

 


/恭介

 こうしてまた世界を巻き戻す。

 理樹はまた強くなれたのだろうか?

 鈴を支えてやってくれよ?

 お前が鈴を支えられるようになるまで、

 この世界を終えられるまで、

 俺はこの世界を、

 繰り返す。

 

 


/理樹

 僕は暗闇の中を歩く。
 隣には幼馴染の鈴。

 後ろの光でなにがあったのかわからない。
 だけど進もう、そこで大切なものを貰ったから。

 繰り返す、いつまでも。
 この世界が、終わるまで。

 最後に、聞き慣れた声が聞こえたような気がした。

 

 

 


END

 

 

 

 

 


あとがき
 なに沙耶ほっぽり出してんだちくしょー、と自分でも言ってみます。
 自分が前に書いたやつってどんなだろう?と漁ってたら鳥肌モノでしたので(勿論、悪い意味で)
 神主あんぱん様主催、姉御祭に出させていただいた時のやつですね。
 多少(多々?)改良(悪?)を加えて研修室お送りさせていただいています。
 そういえばアレが発端でss書くようになったんですよね。
 二次創作界に、変な生物(研修生)が紛れ込んでしまった…
 ともかく、それを見なおし、また、先輩作家様方の助言も踏まえ、現在の私なりに進化(退化?)させてみました。
 ss情報サイトに投稿するべきか悩んだ末、その5秒後に「既に改定前が投稿されてるじゃないか」と気付き、ここでひっそりと後悔(誤字にあらず)することにします。

 ちなみに、話の根幹は当時のままなので、「今考えると独自解釈満載だよなぁ」とかありますが、まぁいつものことなので冷ややかな目でお見守り下さい。

 「タイムマシンの行き先」はリトルバスターズ!EXをクリアしてからの更新にしたいかな、とか勝手ほざいてみます。
 最早覚えている方がいるのかさえ不明ですが、「シンクロニクル」や「a family」などは、「タイムマシンの行き先」が完結したあたりから再開させたいです。
 ホント、途中で投げてばっかりなので頑張ります。
 来週の土曜あたりまでにコンプ出来たらええなぁ、とw
 ではでは~

 

真人「これは…押していいのか?」
理樹「いや、勝手に押しちゃうのもまずいと思うよ」
謙吾「なに。男は度胸だ!」
理樹「なにやってんのさ謙吾っ!」
 チュド~~~~~~~ン!
恭介「ぎゃはーー!」
理樹「……」
真人「……」
謙吾「……」
謙吾「何をやっているのだ?恭介」
理樹「謙吾が素に戻ったっ!?」

恭介「…日に日にこの屈辱が心地良くなってくるぜ」
鈴「こいつきしょいっ!」

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無題
姉御のってなんかくすぐったくていいですねー。
でも私的には沙耶の続きをしてほしかったッス。
(これはこれでいいけど)
NONAME 2008/08/28(Thu)08:09: 編集
Re:無題
うぅ、コメントありがとうございます。
文体やらなんやらは割と変わったかと思うのですが、水面下だった実力が水面に近づいただけで未だ離水すら出来ていないような気分です…
そう、まさに雲を掴むような状態で。
推敲を重ねて皆様が楽しめるような作品を作れるようにします!

とまぁ、未だ長期休暇的なアレなのに色々用事が入ってくるようになって更新が遅れそうなのが歯がゆいことですが…
【2008/09/02 17:33】
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誕生日:
1980/02/26
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学生
趣味:
散歩
自己紹介:
 プロフィールを詐称する癖があります。
 二次創作がメインで、現在一次創作は停止気味です。
 暇なとき、「のんびりしていこう」という場所がここであればとても嬉しいです。

最近の衝撃:
 寝言「魔貫光殺砲」
 …そうですか、緑の人ですか。

注意:
 ルールとかとやかく言うのは嫌ですが、一応と。
 他の作家の皆様も何人か迷惑しているそうなのでこちらも。
 まぁ、最低限の常識は守ってください。ということです。

 文書の無断使用・転載はなさらないよう御願い致します。
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